マルーンに乗って

お膝元で暮らす日常の思いつき

全くメランコリックでないジゴロ二人。

「メランコリック」とは辞書によると「物思いに沈むさま、憂鬱であるさま」だそうです。
…憂鬱?
朝夏さん演ずるダニエルはともかく、真風さんが演じているスタンが物思いに沈んでいるようには見えませんよね。
とにかく今回の『メランコリック・ジゴロ』ってそんなにジゴロの二人に暗さがないんです。

その辺りが初演と雰囲気が違う要素なのかな?と思ったのですが、何しろ1993年上演ってことは22年前の作品!
観ているんですけど…どんな話だったとか演じているジェンヌさんは覚えていても、さすがに醸し出す空気感まではうろ覚えなのが悔しいです。


なのであくまでもわたしの覚えている限りの印象で書きますが、安寿さんって冷たいというかクールな男役だったと思います。
自分が幼かったこともあって、ダニエルがフェリシアに惹かれていった過程みたいなのも全く分からずラストシーンは結構ビックリした思い出が。
ただ当時のわたしは森奈さんが物凄く好きだったのでフェリシアとダニエルが結ばれたのはメッチャ嬉しかったんですよね。
フェリシアに感情移入して観てましたし。

とにかく安寿ダニエルはクールな装い、時おり見せる優しさにフェリシアと観客が胸キュンしていたのかな~と思うんです。


しかし朝夏ダニエルは稽古場レポートによると正塚氏に「クールに」と演出されているとのこと。
つまり安寿ダニエルと逆なのでは?と感じるんです。

朝夏さん演ずるダニエルは情が滲み出ています。
フェリシアに対していまいちクールになりきれないところが良いんです!
そしてそんなダニエルだったからこそ、実咲さん演じる一見頑ななフェリシアの心がほどけていったのではないでしょうか。


憂鬱といえばパーティ会場でパトロンのレジーナにフラレたあと、一人になったダニエルの場面が唯一それを感じさせるシーンです。

ここも安寿さんはどこかうそぶいているかのようなシニカルな感じで台詞を言っていたような気がします。

朝夏さんのダニエルは状況を噛みしめているかのように台詞を言っているけど、でもこれまでだってどうにかなったじゃないか!という流れの時突き抜けた明るさがあります。
やけっぱちではなく、朝夏さんの持ち味である太陽の光が漏れ出ている感じなんです。

そこがダニエルの根本的には良い人というのが表されているようで好きです。


ダニエルのテーマを聞く限り、彼はどうやら田舎から出てきてしかも戻れない感じなんですよね。
だから一時都会に出てきた頃は一人きりだったんだろうと思うんです。
(そしてその辺りがフェリシアに惹かれていくひとつの理由なんでしょうね)

ただ朝夏ダニエルの場合持ち前の明るさと優しさで周りの人達が放っておかなかったのでは?って感じです。
中でも真風スタンは彼を見つけた時、すぐさま気に入って友達になってそうなのが面白いですよね。
だって最初にお願いする時の猫なで声みたいなのと、もう仕方ないなぁってダニエルとの関係が仲が良すぎなんですもの。
それに何といってもジゴロに仕立てたのはスタンなんですよ!

そして周りに助けられたからこそ、浮浪者にも優しいのかな?と。
気持ちのお返しが出来る人って良いですよね。
(スタンも一緒に踊ったりして優しいんです)


大体真風さん演ずるスタンの飄々とした雰囲気も、その日暮らしみたいないつまでもやってられないジゴロなんて職(?)のくせに悲壮感ゼロ!
むしろ「貴族」設定に納得ですよ、どこかお坊っちゃま気質なんでしょうね。
金儲けにしても、楽して稼ぎたいっていうどこか貴族だった頃を忘れられないみたいな理由があるのかもです。
別にお金に困ってそうではないんですよね。

真矢さんのスタンは面白いキャラが全面!って感じで、いかにもコメディ担当のように見えてました。
だのでダニエルの「貴族」発言も、笑い取りに行く台詞って印象だったんですけどね。
あくまでもわたしの覚えている限りの印象ですが!


やっぱり中の人の持ち味の違いって大きいってことでしょうか。
その違いが今回の宙組バージョンは大きく出ているように感じました。


とにかく太陽を内に秘めた朝夏ダニエルと、飄々としてどこか爽やかな真風スタン。
最高です!