マルーンに乗って

お膝元で暮らす日常の思いつき

突然『ガイズ&ドールズ』のツボ。北翔スカイの中身が好き。

『ガイズ&ドールズ』って大劇場公演で行われる久々のブロードウェイミュージカルだと思うのですが、やはり良いですよねぇ。
まず脚本がしっかりしているから、物語が分かりやすい。
そしてナンバーが美しくて、その曲を聞いているだけでどんな心境か、状況なのかが分かりますもの。
例えば♪はったりのフーガなんて英語で聞いても、あの3人組(ナイスリーナイスリー、ベニー、ラスティ)のウキウキ競馬気分が伝わってきそうです。

単純に作品が良いというだけではなく、今回『ガイズ&ドールズ』は幸運にも星組とぴったしの演目だったというのが本当に作品の出来に大きかったと思います。
その星組はこの作品で新たに動き出したばかりのカンパニーだなんて信じられないですよね。
ましてそれを牽引する立場のトップスターはこの作品がお披露目だなんて!
まさにわたしには奇跡!!って感じでした。


さて『ガイズ&ドールズ』の主役は北翔さん演じるスカイ・マスターソン。
登場はオーバーチュアより前。
恐らく宝塚版にだけある♪運命よ今夜は女神らしくで登場します。

実は再演の紫吹さん主演のも2回は観ていますし、うろ覚えなんですが初演もテレビで見たような思い出があります。
だのにすっかり忘れていましたよ、幕開けってあんなだったんですね。
セリ上がりで舞台にはただ北翔スカイが一人だけ…。

主役のスカイ・マスターソンの顔見せであり、まさに北翔海莉のお披露目シーンなわけです。
わたし、ここで泣かされてしまいました。

というのもですね。
後ろ向きで登場した時の堂々たる男役姿だけでもウットリだったんですが、このあとポーズをとるんですね。
その決め方、ソフト帽へ手をやる腕の動き、さらに投げる、振り返るという全てが音楽にぴったし合っている!
いや、振付なら当然かもしれません。
♪ジャン!というインパクトでのキメはそうでしょう、でもソフト帽へしなやかに腕を動かす時ですら動きが曲のテンポとぴったしで!

この人の中には音楽が流れているんだ!と感じた時震えました。

その短いシーンではセリ、照明、装置、オケなど裏方さんと北翔さんだけでブロードウェイミュージカルの世界を作り出しています。
それも宝塚歌劇団がやる宝塚としてのブロードウェイミュージカルを。
あの動きだけでもスカイの伊達男っぷりが伝わりますし、しかもこれが男役か!って北翔さんの迫力が本当に素晴らしくて。
そしてその瞬間、指揮者の佐々田さんは背中向きの北翔さんに合わせるべく緊張感のある、でも愛情たっぷりの優しい目線で見つめているんですよ。
これが専用の生オケか!と総合的に感動でした。

裏方さん含めて全員が『ガイズ&ドールズ』を良いものにしよう、北翔海莉のお披露目を成功させようという熱さがあることもたまらなかったです。
そしてその良きものにしよう!と力を集められるのがトップスターになった北翔さんの魅力ではないかなと思います。


そしてそんな北翔さん演じるスカイ・マスターソン。
彼に感じるオベディア=素直さんの気配、そこが良いなぁと思いました。
今までのスカイには感じられなかった部分ではないでしょうか。

北翔さん演ずるスカイには只者ではない感があります。
凄腕ギャンブラーなんだから当然とはいえ、そこには悪党だとは思えない爽やかというかスマートさがあるんですよね。

例えば劇中で最初に登場する時乗ってきたタクシードライバーへのチップの渡し方。
さりげないけれど、多目にあげたんだろうなぁという感じが良い。
(もちろん受け取る方の芝居も良かった!)

教会でサラと出会った時は裏社会の伊達男マックスのくせに、いざハバナへ行くともうサラに振り回されている。
そこもオベディアさんだなぁと思います。

ただ賭けに勝つためだけに女性を連れ出したなら、別にどう扱ってもいいわけじゃないですか。
それがサラの行きたいところへ行く観光について回ってるんですよ?!
しかも海外版だとネイサンとしている賭けは「指定した女性とのベッドイン」なんですね。
だからアルコールを飲ませて酔っぱらわせようとするくせに、いざ酔っぱらったらてんてこ舞い。
サラに「2、3日泊まろう」と言われれば急にシリアスな表情で帰ろうとする。
オベディア、あんた本当に素直で良い男だなぁ!

だからこそ太鼓を嬉しそうに叩くラストシーン、納得なんですよね。
オベディアさんなら叩いて当然ですもの。

そんなスカイの本質、中身のオベディアを常に感じさせる北翔さんのお芝居が大好きでした!