マルーンに乗って

お膝元で暮らす日常の思いつき

観劇中、ウバルドさまを見て感じていたこと徒然。その2。

Ⅱ幕 1場 石壁

一幕と同じようにまず最初にウバルドが登場します。
これも木村氏のなんらかの意図があってのことだと思うのですが…、とにかく幕開けは暗いところから始まるんです。
音楽の雰囲気と相まって緊張感があります。

この時は上手花道よりウバルドはのっしのっしと現れます。
この何とも言えない男らしい歩き方も好きです。

「平和が一番だと…!」

この時掲げた剣を回すのも良いですよね!

そして素早く下手へダッシュ!ついでに銀橋でジャンプ!!
思ったよりジャンプは高くてビックリします。
東宝銀橋はまっすぐだったと思うので、宝塚より落ちる危険性は少ないですよね。
まぁ真風さん、大劇場公演中も一度も落ちてはいないのだから大丈夫でしょうけど。

下手に着いた時、剣を振り回すのも好きです。
ここのドレープのピラピラ具合も絶妙です。

そして下手花道の壁とお友達に。
『ロミジュリ』の死といい、何故か壁が似合う真風さん。
ここでズリズリと壁を利用して一旦座るのが格好良く見えるのが不思議。
足長いな~とか思ってました。

「戦いはまだ終わってない」

ここで壁を左手で叩きます。
珍しいですよね、曲に合わせて舞台を素手で叩くって。
はっきり音が聞こえるので、ちょっと手は痛くないのかな?なんて思ったりもします。

本舞台に移動したウバルドは石壁の上に登場した神官を剣で指します。
ここで本当にエチオピア人はバカにされてるなぁと思うのは、お供に兵士も付いていない上に神官なんて戦いと無縁の人達なのに全くビビらないんですよね。
あげく、もう一幕のように剣を奪い取ることもしない。
アムネリスから言わせてみれば平和ぼけが始まっているわけです。

「そもそも世界は不公平なもの」

ここでしゃがむ振りも格好良いんですが、あれですかねピラピラで見えにくい足が強調される感じがするんですかね?

「そんな世界はひっくり返せ!」

ここエチオピア3がキリッと良い表情で歌ってるんですが、やっぱり神官達には通じない。
ここでも剣を掲げていたと思うのですが、さらに小馬鹿にされるという展開が可哀想すぎです。

そして騒がしくなったので下手花道にはけて行きますが、絶対この時今なら勝てる!と思ってそうです。
エジプト兵は皆剣を装備もせず、はしゃいでいるだけですから。
そんな様子を一瞥したあと、顔クイでカマンテとサウフェを呼び去って行きます。
ってか、本当に顔クイったらヤバい!

余談ですが、ここで文字通り上から目線で嫌味ったらしいのが組長と同期というのもツボでした。
組替え直後にこの場面って心折れないかしら?なんて思ったり、…いや大丈夫ですけどね!
(一幕ラストで組長さんと小競り合いしてるのもツボ)


♪月の満ちるころ

このナンバーの前にアイーダと父アモナスロ王の語らいがあるのですが「ウバルドから聞いた」と話題に登場します。

まぁあんな堂々と大衆の面前で歌われては事情を伝えるしかないでしょうけど、ウバルドが「独裁的」な父王(この「独裁的」って解説、何に書いてたのか思い出せない!)に妹を追い詰めるようなこと望んで言うとは思えないので心理的にいっぱいいっぱいだなぁと思います。
そして一体アイーダのいないところでどんな会話をしているのか気になりますよね。
恐らくウバルドは父が狂ったふりをしているのも、ここでアイーダにラダメスから情報を聞き出せと告げられるのも知っているのでしょう。

二幕でアイーダが着ているドレスはラダメスからの贈り物だそうで随分と大胆だなぁと思います。

ラダメスがドレスを買っても浮かれたエジプト側は何も思わなそうですが(ケペルとメレルカはワクワク追求してきそうですけどね)、アイーダの服装が変わったのはエチオピア人には衝撃的すぎではないですか?
だって見た目に変わりすぎですもの。
しかもどうやって入手したかなんて改めて考える必要もなく、あいつからですよね?としか思えないわけで。
何しろエチオピア人にエジプトで新しい服を入手するなんて不可能でしょうし。

ウバルドからしてみれば、アイーダが一幕で裾が擦りきれたようなドレスを着ているのは重々知っていた訳です。
(何しろ裾を掴んだ時しゃがんでますし、よく見えたでしょう)
何故か王女なのにエチオピア人女性の中ではぶっちぎりの肌見せ状態でしたから、出来れば着替えさせてやりたいぐらい思ってそうなんですよ。
だって妹が大好きですから、そこは間違いないんです。
でも囚われの身ではそれは難しく、しかも憎いエジプトの将軍が本来なら兄としてやってやりたかったことをいとも簡単にしてくれたというのは…さぞかし屈辱的ですよね。

しかもさすがに「そんなもの脱げ!」とは言えないし、かといってアイーダに会えば見たくもないプレゼントを身に纏ってるわで…二幕のウバルドは相当追い詰められていたでしょうね。

2場でアイーダが登場する時。
驚くほどにこやかに、しかもウキウキと正しく恋する乙女状態で現れることに驚きます。

これは全くもって想像なのですが、ドレスのことも含めてアモナスロ王達はアイーダを泳がせていたのかな?と思います。
ファラオ暗殺後、何故かあっさりと一緒にエチオピア人女性達は帰国しているので彼女達も作戦について聞かされていた可能性大ですし。
何しろ作戦の要はラダメスから情報をアイーダが聞き出すことですから、あえて自由にさせていたのではないかと。
そして近頃兄も含めて皆私にうるさいこと言ってこなくなったし、こんな素敵なドレスまで貰っちゃった!ともなれば浮かれちゃうよな~と思うわけです。

結局アモナスロ王の作戦を知ったアイーダはそれを断り、さらに偽の愛想尽かしをするわけですが…。
アイーダも切ないけれど、王女らしくあって欲しいと願っていたエチオピア3がこの作戦を了承していることも切ないです。
一幕であんなに「奴隷に変わった!」と責めていた彼らが、王女を自ら敵の将軍に差し出す作戦なんて本当ならやりたくなかったはず。
でも、もうエチオピアのためにはそれしかないという闇に落ちているのだろうと感じます。

ファラオの守りは手薄になる…」の時、後ろにエチオピア3が登場するのですが一体どういう気持ちであの二人を見張っていたんだろうと思うと…。
ここでの3人はあまり表情が読めません。
何も思っていないのか、それとももう何か感じたりすることも止めてしまったのか…。
淡々とアイーダとラダメスを確認すると去ってしまうのでした。

そうそう、去っていく前に顔クイするのも見逃せません。


3場 石壁

悲壮な3人に告げられるアイーダの「私は女になる」宣言。
ここのエチオピア3の反応が、もう泣けます。
彼らにとってエチオピアの復興と同じくらいアイーダ王女を大切にしているのを凄く感じるんです。
王女を守るという大義名分がエジプトでの囚われ身の日々でどれだけ心の支えだったかと、正気を保てたのもそのお蔭では?とすら思うんです。
それが「王女でもない。エチオピア人ですらない」と言われてしまえばアイデンティティーの崩壊ですよね。
彼らには捨てられないものを、あっさり捨ててしまう王女と言うのは…本当に辛かったろうなと思います。
全員絶望感溢れすぎな佇まいですから。

そして3人は言います。

「愚かな!」

「自分勝手な!」

「裏切り者の王女よ!」

そんなことを言えばますます遠のいてしまう、そんなことももう分からないかのように。
エチオピア3はどんどん落ちていきます。

そもそもラダメスから情報を聞き出したアイーダがそれをあっさり自分たちに教えてくれる保証なんてないわけです。
大体何故自由にラダメスと逢い引きさせるような真似をさせておいて、自分たちの元へ戻ってくると思ったのか。
作戦を聞かされ、さらに偶然にもラダメスから聞き出すつもりもなかった情報を聞いてしまったアイーダ
さらに見張られていたことを知った時の口調の冷たさ、冷静であればこの辺りでおかしいことに気づきそうなものなんです。

でも追い詰められているエチオピア3にはそれが分からない。
そしてまるで作戦の為に駒とされたアイーダは言います。

「虫けらだわ!」

ここで飛びかからんばかりに怒りを露にしますが、まずあなたたちがアイーダをそんな風に扱ったんじゃないの?と。
もう切なさが大爆発なんです。

公演も後半に入ると、ここで「アイーダ様!」とカマンテかサウフェのどちらかが発するようになり、さらに場面の熱が増していました。
しかし何を伝えたかったんだろうと思うと、「エチオピアの為に」と言ったところで言い訳にしかならないですし。
しかもエチオピアを捨てたアイーダには関係ない話で…、結局どうにもならない状況ですよね。

恐らくエチオピアでは仲良く暮らしていただろう4人、どうしてこんなにすれ違ってしまったのかと思うと本当に泣けるんです。

ウバルドに至っては手を挙げているわけですが、果たしてそれでどうするつもりだったのか。
暴力を振るったところで尚更どうにもならないし、これはわたしの勝手な希望だけど抱き締めても止められないのにと思ったりもします。

人は何で心が傷つくか分からないから、自分が言われたら嫌なことを悪口とするそうです。

つまりサウフェは「愚か」だと言われることが、カマンテは「自分勝手」と言われることが嫌。
そしてウバルドは裏切り者というより「王子」を否定されることが最も傷つくことなんでしょうね。
そう思うと剣への固執も理解できます。
恐らく由緒のある、例えば王位継承の証とかそういう感じなんでしょう。
エチオピアの復興を果たさなければ、それを裏切れば王子ではない。

王女アイーダを失い、もう彼らには作戦の遂行しか残っていない。
エチオピアの為に愚かな振舞いも自分勝手に生きることも、裏切らずにすむためにはそれしかないんだと悲しいけれど決めてしまったんです。

そのくせ(と言ったらなんですが)

「父上、あいつを信用してもいいのですか?」

の声が冷静で低くてドキドキさせられるので、ここにきてまだ王子感溢れるのか!ともう身がもたない感じです。
本当に良い声だね、堪らないね。


♪神の許し

もう後のないエチオピア3がついに謎の神と交信し始めます。
…もしかしたらウバルドだけなのかもしれませんが。

ただこの場面、果たしてそれを丸っと信じていいのかが謎。
何回も観ていると悩むようになってしまいました。

例えばカマンテとサウフェを担ぐ為に、彼らにとって聞こえのよい言葉を神を出してまでウバルドが語っている可能性ってないんですかね?
それともウバルドもその黒魔術の使者とやらを信じているのか…。

何しろファラオ暗殺作戦、無事成功した後は命を絶つことなんて凄まじい事とてもまともな精神じゃ了承できないですよ。
しかもウバルドの死に際を見てると、どうもファラオ暗殺よりラダメスを嵌めることに重きを置いているように見えるんですよね。
どちらにせよ成功させるためには二人の協力が絶対に必要なわけです。
だからここで説得というか、心一つに行くぞ!と、何が何でもなっておかなければならないわけで…。
一体それは上記どっちのパターンかな?と思ったりもしました。

まぁ、どっちにしろ追い詰められたエチオピア3は怪しげな神の導きによってますます恐ろしい企みにのめり込んでいきます。

カマンテはウバルドさま第一っぽくわたしには見えるので、彼について行けば間違いない!彼の言うことは正しい!!感が凄い。
冷たい、かといって何の感情もないかのような表情で淡々と踊る姿は本当に恐いです。

サウフェはまずアイーダの去った方向を見つめた後、ぽつんと一人ぼっちかのように立ち尽くします。
こういう時に上二人が慰めてあげたり、導いてくれたりした仲だと思うのですがもうそんなことはしてくれない…。
そこでウバルドの歌を聞いたサウフェの変化が本当に恐い。
そうか、神に許されているのか!とキラキラした瞳で剣を見つめ、なんだったら微笑んでいるですもん!!
…こうやって若者は犯罪に手を染めるのねって感じです。

赤いライトに照らされ、見た目にも何だかもう人間ではない雰囲気のエチオピア3。
本当に見てるのが辛いです。

あと真風さんのいっちゃってる感じのお芝居が凄い。

…何だかんだ言って、エチオピア3は心一つに石室に向かったんだと信じたいです。
悲しい友情だけど、死んだ後も一緒にいますしね。


4場 石室


舞台ではエジプト側だけでなく、アイーダとアモナスロ王も銅鑼が三度鳴るのを待っているの姿が。
そうなると潜んでいるエチオピア3にはどう銅鑼が聞こえていたのかが気になります。

まぁ、エジプトの神さまなんて信じていない彼らにはどうでもいいのかもしれませんが、この時ウバルドは後方で謎神様と交信し始めてると思うと不思議です。
だってエジプトの彫像ですよ?
もう目に見えるものも変に捉えてしまうくらいの精神状態ってことなんですかね。

真風さんは上手後方にスタンバイしているので(『ステージ・ドア』参照)あの辺りにいるのか、あの宇宙人とやらを見つめているのかとかつい気にしちゃいます。

今か今かとタイミングを図っているので、恐らく石室での会話を聞いていると思うのですが。
ラダメスがアイーダのことを語ろうとした途端に飛び出してきたのは、たまたまなんでしょうか?
それとも狙って?

とにかく石室が静かになったのを感じとりエチオピア3は躍り出ます!

もうね、本当にウバルドのいっちゃってる表情が凄い。
ファラオの首を掻き斬ったあと、剣を顔の前で持ち直すポーズがヤバい!
あそこで舌ペロしてる?!という噂もありましたが、わたしが見た限りではなかったですね。
ただ白い歯が眩しいのが逆に怪しいというのが!

ファラオの傍らにしゃがみ剣を突き立て

「見ろ!神のご加護だ!」

この時ラダメスにはっきり目線を合わせているので、ラダメスへ何か言ってやりたかったんだなという意思を感じます。
やっぱり相当恨んでるんですよ、アイーダに関して「お前さえいなければ!」って思わない日はなかったでしょうし。

そしてウバルドの「エチオピアは不滅だ!」で3人とも死んでしまうのです。

ここのサウフェがねぇ、嬉しそうに首を切っていたと思うんです。
そして微笑みながら亡くなるんですよ!
…彼には故郷エチオピアが見えていたんでしょうか?泣けます。
だって亡骸として横たわっている時も笑顔なんですもの。

実は基本ウバルドをガン見だったので、サウフェはmy楽に頑張って見ました。
話題の微笑みを見なくては!と。
なのでカマンテの死に際をきちんと見られていないのが今さら残念です。
しかもせめて死に顔だけでも!と思ったら、カマンテ仰向けで亡くなってるけど顔が客席から見えないんですね!
本当に澄輝さんには申し訳ないです。

ウバルドが二人と違って剣をお腹を刺したのは、やっぱりラダメスに一泡吹かせたいからだと思います。
裏切り者がいたと、その裏切り者はラダメスだと言いさえすれば彼がどうなるか。
そして愛する妹アイーダから遠ざけられると見越しての行動なんでしょう。
色々間違っているけどウバルドなりに愛ゆえの行動だと思うと…、エチオピア勢にも愛はあったんだなと胸を打ちます。

ここのね、必死に起き上がろうとしてる姿もグッとくるんです。

息も絶え絶えの中、駆け寄ってきたラダメスに向かって「裏切り者は…」と言う時お互いの目が合ってるんですよね。
そしてウバルドが亡くなった後、思い当たるふしのありすぎるラダメスの表情がみるみる変わるんですよ。
ここのお芝居の流れ、好きです。

そしてエチオピア3、ウバルド、カマンテ、サウフェの物語は終わるのでした。


フィナーレへ。

フィナーレAでは石壁から再び真風さんが登場します。
一幕の最初と同じように暗がりの中、それも全く同じ扉から。

どうしてこんな演出なんだろう?とずっと気になっていたのですが、ある時ふと思ったんです。
きっと一緒なのは意味があるのではないかと?
舞台上に意味のないものなんてない、全て演出家の意図があります。
わざわざ同じにしてあるのなら、それが答えでは?と。

そこでわたしはフィナーレAで登場するのは、ウバルドの生まれ変わりでないかと思ったんです。

だってそれくらいでないとエチオピア3救われないもの!
それなら歌ってるのが♪お前は奴隷なのも納得だし、と思うんですけどねぇ。
セットもわざわざ石壁だし。

4500年経って、反省したウバルド王子は何だかよく分からないけど凄いイケメンに転生した!
もうこれでいいじゃん!!ってわたしは思ってます。
いくらなんでも繰り返しは可哀想だし、カマンテとサウフェもいるし良かったねって感じです。

…ケペルとメレルカは、ボーナスステージ的な?
功徳をつんだエジプト兵は何度となく生まれ変わってそうですよね。

歌詞もエチオピア3が歌ってると思ったら泣けます。
それに真風さんはパレードでも♪お前は奴隷を歌ってますし!
わたしの中では生まれ変わり決定なのです。


と突如ファンタジーな感想でこの記事も終わるのでした。

「エチオピアは病む」とは真風さんのお茶会でのお話でしたが、観てるこちらも鬱々としてしまうんですよ。
エチオピア側のファンとしては、あの暗い石壁から抜け出していて欲しいと願うばかりです。